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第二百二十二言「今や、各メディアは競合ではありません。この不況手を取り合って頑張ろう」(12月29日号)

『赤い糸プロジェクト』という言葉を耳にしたのは、もう何ヶ月も前のことです。

 

最初、携帯小説が映画化されるという話を耳にした時は、『恋空』や『のだめカンタービレ** 』と同様のマーケティング戦略を繰り広げるのだろうと思いました。

 

*ケータイ小説。2006年に書籍化。2007年に漫画家・映画化。2008年にドラマ化。

**少女マンガ。2006年にドラマ化。2007年にアニメ化。

 

しかし、このプロジェクトは先に述べた二つの作品とは顕著に異なっている部分がありました。それは、ドラマ、映画、書籍、ゲームソフト、CDが同時期に販売されていること。

 

さらに驚いたのは、ドラマと映画のキャストが同一の俳優・女優を起用していること。しかも、映像とドラマで使われるシーンが同じフィルムを使っていること。(プロではないので、断言するには勇気がいりますが、少なくとも私の目には全く同じシーンのように見えた箇所がいくつかありました。)

 

ここまで来ると、通常心配になるのは、「映画でストーリーを知ってしまった人たちがわざわざ何週にもわたりドラマを見るか?」そして、「ドラマを見ている人が、今の段階で結末を知りたいか?」です。

 

しかし、実際には、この映画を見に来ている人たちの多くがドラマを見た上で「先を知りたくなった」と言うではないですか。実際、映画館に足を運べば、あちらこちらで、「ドラマで見てるんだけど、・・・こんな話なんだよ」と同行者に予告する人が多々。不思議なのが、劇場内で見かけるカップルが、中学生や高校生かと思いきや、40代か50代までと幅広い。

 

では、映画を見た後の視聴者の行動はというと、またこれも面白い。その足で、書店に向かい、『赤い糸』の原作を購入しようとする。するとそこには、『赤い糸』だけでなく、『赤い糸destiny』やら『赤い糸precious』など、似てはいるが異なった作品が並んでいます。

 

次に、全てのストーリーを映画で知ってしまった人がドラマを見るかについてですが、「あのシーンと、このシーンはどうやって繋がれるのだろう?」と好奇心に働きかけられた視聴者がドラマも見るのでしょう。映画での展開の速さについていけなかった人たちは、書籍なりドラマなりで理解度を高める。

 

そして、DS。コマーシャルで「小説と結末が違う!」と聞いてしまえば、ゲームソフトも買いたくなるでしょう。書籍は1050円、DS3990円。書籍よりは高価と言えども、ちょっと頑張れば中学生でも買えなくない値段です。

 

さらに言うなら、食品業界とのコラボが面白い。ドラマ、映画、コマーシャルで何回も飛び出すのが赤いパッケージのチョコレート。「本当に、あのシーンはチョコレートでなければならなかったのか?」と考えると、缶ジュースやスポーツドリンク、和菓子でも話は繋がったように思えます。しかし、何回も何回も、チョコレートが登場するわけです。

 

チョコレーを封筒に入れてプレゼントするシーン。彼氏彼女が板チョコを分けあうシーン。DSを買えなくとも、チョコレートならすぐに手が届く小学生や中学生は、ドラマや映画の主人公になったつもりで、チョコレート片手に一人孤独に思いにふけってみたり、大好きな人にプレゼントしたりするでしょう。

 

ここまでに挙げた全てことにおいて、相乗効果が現れるかは現段階では分かりません。が、私の希望としては、相乗効果があってもらいたいものです。なぜなら、これまで互いが競合と感じていた多くの媒体や異なったマーケットが手を結び、この不況を乗り越えようとする姿こそ、私の心に響くものがあったからです。

 

『赤い糸プロジェクト』。一人では戦えないよ 今の時代、でも一緒なら頑張れる!そんな夢や希望を大人たちに与えるプロジェクトだと思います。

 

野村るり子

第二百二十一言「建築家安藤忠雄先生に学ぶ。リーダーの心得」(12月22日号)

「『あなたの尊敬する建築家は誰ですか?』と入試面接で聞かれたら、ガウディーと安藤忠雄先生のお名前は出してはならない」

 

これは、建築家を目指す、大学・大学院受験生の中で噂になっていることです。言い換えれば、あまりにも多くの人が、ガウディーや安藤忠雄先生に憧れ建築家になるのだから、同じことを話しても個性が出ない、ということです。

 

ガウディーと同様、世界に多くのファンを持つ安藤忠雄先生。先日は、こんな世界トップの先生から、「リーダー」についてのお話を伺うことができました。

 

安藤先生は『住吉長屋』、『光の協会』、『東急東横線渋谷駅』といった国内の建造物だけでなく、『FABRICAベネトンアートスクール』、『バーレン遺跡博物館』、『モンテレイ大学RGSセンター』といった世界各国に著名な建造物を残してこられました。

 

これだけ大きな仕事を手がけていらっしゃるなら、きっと何百、何千という多くの社員を有する大企業をイメージしそうになります。しかし、実際には、僅か27名という少数のコアメンバーで事務所は動いています。

 

では、どうやって、この少ないメンバーで、世界各国に作品を残すことが出来たのでしょう?秘密は、チーム編成にありました。安藤先生は、「現地の専門家たち」とチームを組み、彼らを「パートナー」と呼び、作品に取り組んで来られました。

 

このことは、多くの小規模企業経営者は夢と希望を与えたのではないでしょうか。何百人、何千人、何万人という社員がなくとも、有能なパートナーとコラボレーションすれば、世界一の仕事を成し遂げることができる。しかし、そこになくてはならないのは、リーダーとしての資質です。

 

「リーダー」について、安藤先生がご説明下さったことを、いくつか整理してみました。

n  技術だけは不十分。そこに思いがなければ。

n  独自の哲学、自分の価値観を持たねばならない。

n  パートナー全員が「(この建築物は)私が造った!」と言うのがチームのあるべき姿。

n  頑張る人にだけ「光」が見える。

n  「夢」、「勇気」、「忍耐」、「責任感」。これがリーダーに必要だ。

n  「夢を言葉にする力」を持たなければ人を動かすことは出来ない。

n  どんな壁に直面しても、「なんとかなるだろう!」と言ってきた。

n  小さな仕事が人(部下)を育てる。

 

最後に、一つ。安藤忠雄先生は、部下のかける電話の内容一つ一つをチェックされるそうです。部下の立場としては、大変緊張するものです。また、その内容に、ほんの少しでも問題を感じたら、注意をする。この、一ミリ、一秒、一グラムの誤差も許さない姿勢が、世界最高の作品へと繋がるのでしょう。

 

世界一の作品をつくるリーダー。それは、高い志を持ち、その気持ちを社員やパートナーと共有できる人。そして、最後はチームとして、妥協することなく描いた作品を作りきる人のことなのでしょう。

 

 

野村るり子

第二百二十言「鈴木大地さんのコラムに学ぶ。書き続けることが優れたライターへの近道」(12月15日号)

毎日新聞のコラム、『金曜カフェ』によく目が留まります。そこにある、鈴木大地さんのお名前や笑顔の顔写真に興味を惹かれた読者もいらっしゃるでしょう。私の場合は、鈴木さんの文章力に毎回心が奪われます。

 

構成がしっかりしている。一挙に興味を引く書き出し。文章は短文で切れがある。段落のつけるタイミングも絶妙。そして、内容はエピソードの描写に終らず、一般化され教訓が含まれている。それら故、読者はどんどん文章に引き込まれていくのでしょう。

 

今回、私が拝見したコラムは、鈴木さんが、市立船橋高の校長先生の告別式でマラソンの小出監督にお会いするところから始まります。中に、小出監督の語り、故人の語り、鈴木さんご自身の語りが「 」(かっこ)で何回か出て来ます。その度、それぞれの特徴的な声が聞えてくるようでした。「 」前後での語り手の描写がリアルであり、「 」内の語尾に誰もが知るそれぞれの特徴が含まれているからでしょう。

 

また、鈴木大地さんの文章には、難解な文章はほとんど使われていません。ご自身は研究者として長く生きて来られていますし、大学准教授というお仕事柄、専門用語を使う機会は多いはずです。しかし、新聞のコラムでは、小学生が読んでも理解できる、分かりやすい文章で書かれています。これは、「読み手を中心に書こう」という書き手の心がけの表れではないかと思います。

 

10年ほど前に鈴木さんが文章を書かれていることを知りました。それから、鈴木さんの文章と出会う度に、文章のレベルが高まっているこことに気付きます。私は、プロの書き手ではありませんので、生意気なことは言えませんが、読み手の立場として語るなら、以下のようなことを感じます。

「また、読みやすくなっている」

「以前より、旬な話題が豊富に取り入れられている」

「前より、書き方が工夫されている」、と。

 

文章力は「高めたい」と思うだけでは高まりません。では、読書をすれば高まるのでしょうか?これだけでも限度があります。やはり、常に書き続けることが文章力を高める秘訣なのではないでしょうか

 

野村るり子

第二百十九言「師走のご多忙中ですが。企画会議の時間を設けてみてはいかがですか?」(12月08日号)

お忙しいですか?

はい、お蔭様で。

年末はいつもバタバタしてますねぇ。

 

こんな会話を、このごろ毎日のように耳にしています。

 

しかし、この忙しさと会社の売上は比例しているかと言えば、そうでもありません。

 

理由はいたって簡単です。時間の使い方を誤っている会社では、忙しいわりに、その労働が売上に繋がらない。仮に売上に繋がったとしても、コストばかりかかり、利益に繋がらない。

 

これは、労働集約型経営の忙しさ故ではないでしょうか?

 

この師走に、比較的優雅に仕事をしながら利益を出している社長さんたちも沢山いらっしゃいます。彼らの共通点は、「考えること」に時間を割り振っている点です。しかも、社長ひとりが考える時間ではなく、経営陣全員が一緒に考えたり、取引先のコアパーソンと一緒に考えたりしています。

 

以前、右肩上がりを続ける米系ITベンチャーで、ワンフロアーの会社に11個ものミーティングルームがあるのを知って驚いたことがあります。それらの、ほとんどに「会議中」の札が下がっていました。

 

勿論、会議を開けば利益に繋がるわけではありません。会議を開くことが目的になっている会社では、無駄な時間が発生する可能性も多々あります。しかし、会社としてのビジョンを会議の参加者が共有した上で、目的を持ってミーティングを開くのであれば、個々人の優れた発想を形へと変えていくことができます。

 

発想は企画に落とし、それを商品やサービスといった形にしない限り売上にはつながりません。ですから、目的をきちんと持ったメンバーによるブレインストーミングの時間を設けることは、何もしないより必ず会社をプラスの方向に導くことができます。

 

気になるとすれば、会議に費やす時間コストです。多忙な会社経営者であればあるほど、会議にかける1時間を自分で使えば、あれも出来る、これも出来ると、いった発想が頭をよぎることもあるでしょう。そこで、チャンスと言えるのは、取引先が冬季休暇に入る年末年始なのではないでしょうか。

 

ちょっと無理しても経営陣やコアとなる社員を集め、来年に向けて話し合う時間をつくってみてはどうでしょうか。そのちょっとした心がけが、すぐに迎える新年以降の素晴らしい企画に繋がるのではないでしょうか。

 

野村るり子

第二百十八言「オバマのスピーチはなぜ魅力的か。」(12月01日号)

バラク・オバマ氏のスピーチを聞きながら涙するアメリカ国民の姿を、映像を通してご覧になった方も多いことでしょう。女性が泣き、老人が泣き、肌の色が異なる人が泣いている姿です。

 

国民を感動させた理由の一つは、オバマ氏の政策が国民の生活を豊かにすると感じられるものであったからです。また、それと同時に、彼のスピーチは大変分かりやすく、誰の心にも直接的に響くものでした。

 

オバマ氏の経歴から、彼がどれだけ政治、法律、社会といった多くの分野において深い知識を持っているかは分かります。しかし、彼は、国民に向けてのスピーチで、専門用語を使うことはほとんどありません。小学生にでも伝わる分かりやすい単語と、直接的で分かりやすい文法に徹しています。

 

オバマ氏のスピーチにはリズムがあります。例えば、「女性であろうと男性であろうと、若者であろうとお年寄りであろうと。白人であろうと黒人であろうと・・・」といったように、同じような関係性を示すフレーズを繰り返し唱えます。聞く側は、そのリズムに慣れ、スピーチが後半に近づけば近づくほど、オバマ氏節をマスターしていきます。

 

「間」を効果的に用いるのも、オバマ氏の特徴です。適度な間によって、聴衆の思考がスピーチに追いつくことができます。また、この「間」の前後に述べられる重要箇所はより一層、聞き手の記憶に残ります。

 

以下は、バラク・オバマのスピーチの一部をディクテーションしたものです。おそらく、日本の中学英語を学んだ方であれば、辞書がなくとも、7割から8割は理解できるのではないでしょうか?

 

Tonight, more Americans are out of work and more are working for less. (今夜、アメリカでは失業者が増え、少ない報酬のために働いています。)

 

More of you have lost your homes.  And, even more are watching your home values plummet.(家を失った人が増えています。それ以上に、資産価値の急落を目の当たりにする人が増えています。)

 

More of you have cars you can't afford to drive, credit cards, bills you can't afford to pay, and tuition that's beyond your reach. (車を持っていても、それを維持できない人が増えています。クレジットカードや請求書を持っていても、それを支払うことのできない人が増えています。手の届かない授業料を目の前にしている人が増えています。)

 

Now, these challenges are not all of government's making. But, the failure to respond is a direct result of a broken politics in Washington and the failed policies.(さて、これらの難問は、全て政府によってもたらしたものではありません。しかし、これらの難問に対処できなかったのは、ワシントンにおける政治破たんと政策の失敗による直接的な結果です。)

 

America, we are better than these last eight years, We are a better country than this. 

(アメリカ。私たちはこれまでの8年間より優れています。私たちは、これより優れた国家のはずです。)

 

*英文出典:「オバマ演説集」(朝日出版社)より抜粋。

*(  )内の翻訳は野村

 

国の代表になるには、確固たる政策を持つことは必須です。しかし、その内容が、国民の心に届かなければ、国を変えることができないのが、アメリカの選挙制度です。それ故、アメリカでは知識や経験に加え、政治家としてのコミュニケーション力のある人たちが、国家を代表しているように思います。

 

日本の総理大臣のスピーチに日本国民が涙できる、そんな日が来ることを期待したいものです。

 

野村るり子