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第二百三十一言「経営学の根底に思いやりを感じませんか?」(2009年3月2日号)

先日『Call』という舞台を見てきました。オリジナルはアメリカの『Phone Booth』という映画。『オペラ座の怪人(映画)』の監督として知られるジョエル・シューマッカーの作品です。

 

Call』のテンポよい話の展開に興味を持った私は、早速『Phone Booth』のDVDを入手し、内容を比較することにしました。

 

DVDを鑑賞して感じたことは、8割がたの設定や台詞が同じであったことです。残りの2割は、日本に住む私たちに合わせて編集されていました。例えば、Phone Boothの舞台はマンハッタン。一方、Callの舞台は新宿。Phone Booth ではピザの出前が届くところ、Callではおそばが届く。Phone Boothではアフリカ系アメリカ人女性が登場するところ、Callでは中国人女性が登場する。

 

このように、2つの作品を比較しているうちに、Call制作スタッフの思いやりのようなものを感じてきました。オリジナルの映画と全く同じストーリーで脚本を起こせば、製作費のコスト削減につながるところ、あえて日本の観衆が理解できる内容にしてくれたと感じたからです。それでいて、オリジナル作品の見ごたえある部分はそのまま生かされていました。

 

2つの作品を比較していてあることを思い出しました。それはシャンプー。「何ですか?」と訪ねられそうですので、あえて丁寧に説明させて頂きます。

 

私は、15歳から10年間アメリカで生活していました。この頃は、ちょうどコスメティックのブランドにこだわる年齢です。クラスメートや先輩から「シャンプーならぜったい○○!」や「トリートメントは○○以外使わない!」と教えられれば、直ぐにそのブランドを見つけて試したものです。

 

当時学生の中で人気があったのが、SASSOONAgreeLUXといったものです。ちょっとアメリカかぶれをしたかった頃の私は、休暇に日本に戻れば、エッセンシャルやメリットといったCMでなじみのある商品にはあえて手を触れず、態々遠くのショップまで海外ブランドの品を探しにいったものです。しかし、今思えば、どこの海外ブランドも、多くの部分で日本人の髪質や文化に合せてくれていたような気がします。

 

食品でも同様のことが言えました。アメリカで売られているキャンディーバーは、ちょっとばかり包装が乱れていても、スーパーの棚に陳列されます。しかし、日本で陳列されている商品に包装の乱れを見つけることは殆どないでしょう。このことについて、北米の食品や飲料を輸入・販売する大手企業の方に話を伺ったところ、日本の審査基準は日本の文化に合せ、大変高く設定されていることがわかりました。

 

海外でヒットした商品をそのまま輸入し販売することは容易であり、先にも述べたとおりコスト削減にもつながります。しかし、実際に、その商品を日本国内で普及するなら、オリジナルのままでは不十分です。日本の文化や日本人の特徴に合わせて調整をしなければならないということです。

 

さて、その「調整」というものですが、マーケティングの4Pがそのよい例でしょう。商品やサービスを提供する相手、すなわちターゲット顧客を明確にした上で、その人たちにあった、商品・サービス内容(Product)、価格(Price)、流通・販路(Place)、広告宣伝・パブリケーション(Promotion)を選定する戦略のことです。

 

しかし、これまで「売るための戦略」として捉えていたマーケティングの4Pを、このたび、CallPhone Boothを比較したことで、「お客様への思いやり」と言い換えたくなりました。思いやりを持って商品やサービスを提供するとなれば、よい部分はオリジナルのまま、他は、お客様の立場に立って調整するのが当然と感じたからです。

 

経営学を勉強していると、つい合理的で戦略的な方法を追求しているだけのように感じてしまいます。しかし、そもそも経営学とは結果を出した企業のケースをもとに、成功要因を見出し、体系化したり仮説を立てたりするところから始まったものです。おそらく、スタート地点に戻れば、お客様への心遣いを分析した学問だったのでしょう。

 

今後皆様も、多くの輸入作品や輸入商品・サービスと出会うことでしょう。その時は、ちょっと時間を使い、提供する側がどのような心づかいを持って日本の市場にあわせてくれているかを考えてみてはいかがでしょう。きっと、嬉しい発見ができると思います。

 

 

野村るり子

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