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第二百三十三言 「生きる全ての人には潜在能力がある。Yes We Can! 」(2009年3月16日号)

滑り込みセーフ。『ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏来日記念セミナー』の会場に飛び込むと、受付で「同時通訳のヘッドセットはもうありませんが、よろしいでしょうか」と確認されました。お陰で、通訳を通さないユヌス氏の生の声をそのまま心で受け止めることができました。(時には集中して英語を聴くのもよいことです。)

 

ムハマド・ユヌス氏(Muhammad Yunus Ph.D)がバングラデッシュ・グラミン銀行総裁で、マイクロクレジットの創始者であることは、皆様もご存知でしょう。

 

「個人の過去にお金を貸すのではなく、未来にお金を貸す!」

 

すなわち、ユヌス氏は、実績があるか否かではなく、個人の潜在能力を信じてお金を貸すというのです。驚くことに、このように信用されて融資を受けた人たちのうち、返済が滞ったのは、たった0.5%。周囲の人が個人の潜在能力を信じることが、その人の能力を引き出すことに繋がるのでしょう。

 

言語のまま残しておきたいユヌス氏のフレーズを一つ紹介します。

 

Every individual is a Powerhouse!  

 

全ての人が原動力となっていると、氏は確信しているのです。Few of them や Some of them ではなく、Every と何回も言い切りました。生きる全ての人を指していることばです。このことばが、どれだけ多くの人に勇気を与えてくれることでしょう。

 

そして、全ての人はベンチャーを起す潜在能力があると明言しました(*氏が用いた表現=Potential Venture)。想像力や何かを立ち上げる力は、一部の限られた人に与えられたものではなく、生きる全ての人にあるというのです。

 

最後に、働かされるのではなく好きなことを仕事にし、自分が主体的に働きなさいとメッセージを残しました。

 

「好きなことを仕事にすれば、24時間働いても疲れない。そして、他の人に仕事を与えられるようになりなさい。どうしても仕事がないなら雇われるという選択肢もあるでしょう」

 

氏の言葉は、日本の多くの若者が信じてきたことと180度逆の発想でした。「レベルの高い学校に進み、優良企業に就職することを目標とし、どうしても職がみつからないなら、自営という選択肢を考えようか・・・」というのが従来の考え方ではなかったでしょうか。

 

しかし、本日セミナー会場の至るところで、瞳を輝かせながらユヌス氏のことばに耳を傾ける若者たちの姿を目にして、私は、彼らの瞳の先に、日本の明るい未来を描くことができました。

 

では、ここで、一旦ユヌス氏のセミナーから離れ、日本の現状について考えてみましょう。国内でも、ベンチャーマインドを高める活動は徐々にではありますが増えてきています。ここ10年間で学生のためのベンチャーコンテストの数は急増しました。多くの若者が規制概念にとらわれないオリジナリティー溢れるプランを発表するようになりました。しかし、その中から実際に起業に至った学生はごくわずかです。

 

ではここで、優れた企画を組み立てられる優秀な学生が複数いるのに、起業に至る学生の数が少ないのかについて考えてみましょう。ここ10年間、数々のプランコンテストを拝見した結果、あることに気づきました。まず、コンテストの順位と起業の確率には強い相関関係は感じられないということです。むしろ、準優勝や特別賞を取った若者たちの中からも起業の夢を叶えている人は多く出ていました。

 

次に、起業に至る学生の共通点を見ることにしました。すると、そこには「自分には出来る!」と言い切る心がありました。さらに、周囲を巻き込む力がありました。

 

では、ここで再度ムハマド・ユヌス氏のセミナーを思い出してみましょう。氏の話しを聞き始め聴衆は「私にもできるかも」と感じたはずです。次に「全ての人の中には潜在能力がある!」ということばを繰り返し聞いているうちに、人々の心は「私にもできる!」という確信に変っていったはずです。最後は皆を巻き込むユヌス氏の力強いスピーチを最後まで聴き終えて「私たちならできる!」と個人では到底乗り越えることのできない高い目標に挑戦する気持ちが湧いてきたことでしょう。

 

私は本日、ユヌス氏のセミナーを終えて、日本の若者たちに、何か一つ信念を持ってもらいたいと感じました。そして、『Maybe I can.... (多分できるかも・・・)』や、『Yes I can! But, Can You? (私にはできる!でも、君たちにはできる?)』と、不安げに語る人ではなく、『Yes We Can! (私たちで果たそう!)』と力強く言い切れる人になってもらいたいと思いました。このような若者たちが増えれば、どんな不況であろうと乗り越えられるはずです。

 

野村るり子


 

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