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株式会社ホープス
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第二百四十八言「あらゆることを『逆』にする。捨てたパズルを受け取る」(2009年6月29日号)

ファラ・フォーセットと、マイケル・ジャクソンの死は、全世界に衝撃を与えました。闘病生活を送り、時間をかけて「死」を受け入れたファラと、7月に予定されていたライブ(コンサート)を目前に、突然「死」が訪れたマイケルとでは、最期の形は異なります。しかし、二人に共通していたことは、亡くなった瞬間に、それまでの生き方が周囲高く評価されたことです。

 

どの時代も、「英雄」と呼ばれる人たちは、支持者が多い分、マスコミによる批判の的にもなっています。であるにも関わらず、酷評で知られる一部メディアさえも、最期を迎えた英雄に関しては、「光」の部分をクローズアップします。

 

この状況を、私たちの人生に置き換えてみると、周囲からの細かいネガティブ評価にビクビクしながら生きるより、自分の確固たるポリシーを持って、どうどうと生きる方が、ずっと意義のあることと思えます。さて、本日は、プラス思考で生きるためのポイントを二つ紹介いたします。

 

 

<その1:あらゆることを『逆』にする>

何か新しいことに挑戦する際、不安に感じる人は、少なくありません。なぜなら、これまでの経験に照らし合わせて策を練ることができないからです。そこで、これから新しいことに挑戦したいと考えている人の励みになる言葉を『ムハマド・ユヌス自伝~貧困なき世界をめざす銀行家』(早川書房)から紹介します。

 

「どうやってその革命的なアイディアを思いついたんですか?あなたは銀行家として経験を積んできたわけではないのに、なぜグラミン(グラミン銀行)を設立することができたのですか?」

と周囲から質問された際に、ムハマド・ユヌス氏が決まって答えた内容です。

 

「一般の銀行のやり方をよく見て、あらゆることを逆にしてみたんですよ」(同書、P166からの引用)

 

これは、天邪鬼(あまのじゃく)をよしとした内容ではありません。むしろ、現状を冷静に観察・分析し、問題点を見出し、改善への方法を考え、実行に移す、といった前向きな行動パターンを意味します。もしあなたが既存の制度に疑問を感じ、その改革のために新しいことに挑戦するのであれば、是非、「あらゆることを『逆』にして」仮説を立ててみてはいかがでしょう。

 

<その2:捨てたパズルを受け取る>

会社の上司や部下、夫や妻や子ども、といった身近な人の言動がやたら気になる。そんな方へお勧めの一言です。

 

「自分が過去に捨ててきたパズルのピースを大切な人が届けてくれた」

 

これは、『光と影の法則』(経済界)を読んで、心に残った概念です。

 

「人は、ジグゾーパズルのようなもの。しかし、生きてきた中で、人は、いくつかの(パズルの)ピースを過去に捨ててくる。そして、捨てたパズルは、必ず誰かによって届けられる。それを、受け取らなければならない」(これは、野村の解釈です。ご興味のある方は、是非、ご自身で読んで頂ければと思います。)

 

このパズルのピースとは、過去に捨ててきた人間の特徴です。たとえば、「罵倒する」、「嘘をつく」、「約束を守らない」といった特徴が嫌な人は、それらの特徴を過去に捨ててくるのです。

 

人が、ピースを捨てる理由は大きく分けて二つあります。ひとつは、親の取った言動に傷つき、「自分は絶対親のようにはなりたくない」と感じ、その特徴を捨てる。もう一つは、親に「あなたは、なんてノロいの!」、「あなたは、いつも中途で投げ出す!」などと、注意をされているうちに、嫌になって特徴を捨てる。

 

しかし、ここで不思議なことが、自分が過去に捨ててきたジグゾーパズルのピースは、必ず誰かによって届けられるということです。しかも、自分にとって大切な人の「気になる特徴」として届けられるのです。

 

例えば、

部屋を散らかす夫が許せない!、

期日までに仕事を終えない部下が許せない!、

嘘をつくわが子が許せない!、といったように。

 

実は、これは、他人を許せてないのではなく、「過去の自分」を許せていなからこそ起きる感情なのです。ここで、あなたに求められることは、届けられたピースを受け取ることです。それは、イコール、過去の自分を許すことになります。さらに、周囲に対しても寛容になれます。

 

このように考えれば、ピースを届けてくれた人たちに感謝をしなければならないということでしょう。

 

本日は、二つのテーマに触れてきました。詳しくは、本日紹介した2冊の書籍をご覧下さい。

 

野村るり子

第二百四十七言「エリートビジネスパーソンのための相談コーナー開設。相談受付中!」(2009年6月22日号)

「エリートビジネスパーソンのための相談コーナー開設。相談受付中!」

2009622日号 No.247

 

このたび、これまでのキャリアカウンセリングの中に、新たに、

「ビジネスパーソンのための相談サービス」を開設することにしました。

 

提案を下さったのは、母校ビジネススクールの教授の先生。(*母校には卒業してからも、大変助けてもらっております。皆様も機会を見つけ、母校を訪問したり、同窓会に足を運んでみてはいかがでしょう。)

 

 

<いったい何>

「エリートビジネスパーソンのための相談サービス」って、いったい何?

とのご質問に答えておきましょう。

 

通常のキャリアカウンセリングは、進学、就職、再就職といった折に、受けるのが中心です。それに、比較すると、この新サービスは、ビジネスの世界で"極めて来られた"後、セカンドキャリアを考えたい方が受講するものです。

 

昭和20年代、30年代に生まれ育った方々の中には、今日以上に、「こうあるべき」と敷かれたレールを走って来た方が多いです。この世代の方たちの中に、周囲に認められ、地位や名声、富を築き上げたが、「心にぽっかり空洞を感じる」とおっしゃる方が多いです(*受講生インタビューの結果の基づく)。年俸、1千万、2千万を達成し、子ども、成人した。これからの人生、「自分の心に正直に生きたい」、このように感じる方もたくさんいらっしゃいます。「エリートビジネスパーソンのための相談サービス」では、このような方々を中心にカウンセリングさせて頂きます。

 

<どんな方対象?どんな結果が得られるの?>

私が、これまでに、お手伝いさせて頂いたエリートビジネスパーソンの方の多くが、「学生時代、ミュージシャンを目指していた」「学生時代、役者を目指していた」「学生時代から、ダンスサークルに入っていた」、・・・と何かに打ち込んでこられた方がほとんどです。その好きなことに対する思いを大学卒業と当時に、密閉し30年間ビジネスの世界で走って来られています。

 

そして、「今」だからこそ、本当に好きなことに打ち込みたいと感じている方には、喜んで頂けるサービスです。過去の成功体験記を、小学校、中学校の時代までさかのぼり、お聞かせ頂きます。その上で、ご自信のたな卸しを致します。過去に作った作品もお持ち頂きます。作詞、作曲、ビデオ、自分が写っている雑誌、なんでも結構です。それらを、客観的に分析し、今後のセカンドキャリアで活かします。

 

<他の受講生との違い?>

なんといっても、ビジネスパーソンとして培ってきたスキルや経験、手に入れたネットワークがあります。したがって、若者のカウンセリングと比較すると、「描いたゴール」に即到達できる方が多いです。

 

アウトカムとしては、好きだったスポーツサークルを立ち上げる、バンドを結成する、競技ダンスに出場する。このように趣味に直結したものもあれば、自分の会社を立ち上げる、といったビジネスよりのものもあります。好きなことは、営利感覚でやりたくない、とおっしゃる方も、好きなことで、新規ビジネスを立ち上げたいとおっしゃる方も大歓迎。

 

<どうやって申し込むの?>

通常のキャリアカウンセリングに含まれまれるサービスですので、ご興味のある方は、info@hopes-net.org 「エリートビジネスパーソンのための相談サービス」をタイトルとして、お名前とご連絡先を添えて、お問い合わせ下さい。後日、担当の者より、体験カウンセリングのお知らせをお送りします。

 

<ちょっとした質問に無料で答えてもらいたい>

このような方たちの為に用意したのが、「野村の一言」での対応サービスです。

 

「『野村の一言』エリートビジネスパーソン相談サービス」をタイトルに、同じくinfo@hopes-net.org 宛てに、相談内容を400文字以内にまとめメール下さい。届いたメールの中から、いくつかテーマを選び、「野村の一言」で回答いたします。スポーツにおけるコーチングやビジネスにおけるコンサルティング手法にて回答いたします。また、専門性の高い質問に関しては、HOPESの専門家の意見も用いて回答いたします。(*こちらは、届いたご質問全てに対応できない場合がございます。あらかじめご了承下さい。)

 

 

<エリートの定義ってなに?誰が申し込めるの?>

組織において、トップ5%のマネジメントにつかれていた方と定義させて頂いております。しかし、「自分は、これまで、ある分野において、一生懸命打ち込んで来た」と自身を持って言える方であれば、充分です。野村の一言の読者は、全て、ご自信を「エリート」あるいは「エリート予備郡」と考えて下さい。(*学歴、企業名、このようなもので、HOPESは人の価値を決める団体ではありません。実績ベースでご判断頂ければと思います。)

 

野村るり子

 

第二百四十六言「『何を持っていないか?』ではなく、『何を持っているか?』の観点から、自分を見つめ直す」(2009年6月15日号)

読もう読もうと思いつつ、数ヶ月間ずっと自分のバックに入っていた、五木寛之氏の『林住期』。この度、一挙に読み終えました。ビジネス書に慣れきっていた私は、五木寛之氏の滑らかで、流れるように人の心に届くことばに、最近ではない感動を得ました。

 

なぜ、数ヶ月読むことのなかった『林住期』を一挙に読めたかですか?

 

それは、私が待ち合わせ時間を、1時間半間違えて、会合場所に到着したからです(笑)。

 

集合場所に誰もいないことに気付き、一瞬、「この時間、会社にいられれば、もっと生産性のある何かができたのに」と、ちょっとイラっと来ました。しかし、そこで、気持ちを切り替え、今だから出来ることはないか?と考え私のバックの中を覗いたところ、数ヶ月前から、赤い革表紙を着せられ、読まれることを待っていた『林住期』と目が合いました。

 

誰もいない会議室(待ち合わせ場所)は、会社の電話から開放された、心穏やかに読書ができる、素敵な空間に変わりました。時間を間違えて集合場所に到着するのも、そう悪いことではなかったようです。

 

本日私がお伝えしたいことは、この与えられた時間を価値あるものと感じるのも、無駄なものと感じるのも、あなた次第ということ。そして、この感覚と同様、自分が持って生まれた個性を、プラスに受け止めるもマイナスに受け止めるも、あなた次第ということです。

 

もう10年も前のことです。7歳の時からオリンピック出場を目指して練習に励んできた体操競技選手(当時大学生)の女の子から電話がありました。

 

「今回もオリンピックに出場できませんでした。私はこれから、どうやって生きていけばいいのでしょうか?」

 

彼女は、何回も世界選手権に出場してきた優秀な選手です。しかし、オリンピックに関しては、年齢制限(若すぎて出場できない)や怪我、体調不良といった様々な障害故、出場を逸してきました。

 

このような彼女がWinnerであるか?Loserであるか?・・・こんなことは、周囲が決めることではありません。なぜなら、人それぞれ事象の受け止め方が異なるからです。私の考えを一例とするなら、間違いなく彼女はWinnerであり、成功者です。彼女は、常に高い目標を自らで設定し、その目標に向けて常に成長してきました。結果として、オリンピックに出場はしていませんが、その過程でいくつもの世界選手権に日本代表として出場しています。確実に前に前にと進んで来ました。自分の掲げた目標を100%達成していなかったとしても、その過程で、多くの成果を手にした、彼女を私は、躊躇することなく、「成功者」と呼びます。

 

さらに、自分の掲げた目標を100%達成できなかった人には、100%達成できた人にない強みがあります。それは、「負ける」感覚を持てたこと。この感覚を自分の中だけに封じ込めたのでは惨めな気持ちになります。しかし、その気持ちを知った上で周囲を眺めれば、人に優しくなれます。

 

1等賞が見る景色、2等賞が見る景色、10等賞が見る景色、100等賞が見る景色。・・・これらは全て異なります。同じ距離を走っても、前を走る人の数が異なります。

 

1等賞は、勝者としての喜びがあります。しかし、それと同じぐらいの孤独とも戦わねばなりません。

 

2等賞は、1位になれなれなかった悔しさもあれば、メダルを手にした喜びもあるでしょう。そして、1位の人の背中から学んだことも沢山あるでしょう。

 

10等賞は、メダルは貰えません。しかし、目の前を走る9名の背中から多くを学び、彼らの辛さが理解できたでしょう。

 

100等賞は、さらに多くの前を走る99名の背中から多くを学べたでしょう。前を走る99名の辛さが理解できたはずです。その分、これから出会う多くの人に対して寛容になれるはずです。

 

先に紹介した、オリンピック出場を逸した元体操選手は、オリンピックでの解説者を務めています。テレビ局や制作会社は、なぜオリンピック出場経験のない彼女を選んだのでしょう?それは、彼女が「勝つ喜び」と「勝てない悔しさ」、「選抜される喜び」と「選抜されない悔しさ」の全てを知っていたからです。この経験こそが、どの選手に対しても、愛情を持って解説できる寛容さの源にあるのです。

 

あなたが優れているか、優れていないか?これは、周囲の評価がどうこう言う前に、あなたの心の目が、あなたをどう評価するかではないでしょうか?

 

と、こんなことを考えているうちに「本当の」待ち合わせの時間になりました。一人、また一人と人が集まり、会議室が埋まりました。そして、偶然にも、この日のメインスピーカーの青年が朗読した『ユニークなひび割れ』(作者不詳 菅原裕子訳)の詩は、自分あるべき姿を受け入れ、誇りに思おう、というメッセージが含まれていました。

 

是非、皆さまも、「何を持っていないか?」ではなく、「何を持っているか?」の観点から、自分を見つめなおして下さい。

 

野村るり子

第二百四十五言「コンビニに行って問題意識を持ち、身近な人を『偉大!』と呼ぶ青年。日本の未来に期待が持てそうです」(2009年6月8日号)

 

最近では、あまり耳にしなかった、嬉しい言葉。

 

「うちの父って偉大だなぁ」(by 19歳の青年)

 

平日は地元で、週末は遠方から新幹線でHOPESに通って勉強する若干19歳の青年がいます。以前から、彼の感性には驚かされるものがありました。

 

「コンビニエンスストアAは、どんな小さな駅の近くにもある。でも、コンビニエンスストアBは大きな駅前にしかないんですよ。」

 

「ここのお店には、Cドリンクを置いている。これは、なかなか見つけることができない商品です。」

 

休憩時間に、飲み物一つ買いに行って、こんな言葉をお土産に戻ってきます。多くの人が見落としている些細なことに疑問を持つ心。これこそが、これからの日本には必要なのではないでしょうか。

 

こんな、彼には将来、優れた経営者に育ってもらいたい、と私は思います。しかし、彼の専門は経営学ではありません。大学卒業時には、国家試験を受ける準備もしています。

 

そこで、私は伝えました。「得意分野で頑張ってもらいたい。でも、道を歩く時は、テキストは読めないだろうから、経営について考えながら、色々なお店を覗いて貰いたい」と。

 

今日は、学科の勉強後、ちょっとだけ経営学について触れてみました。

 

「地価が高い南青山の路面店で、なぜ999円ショップが潰れないのか?客単価数百円のファーストフード店が潰れないのか?」について話し合うことにしました。

 

すると、青年は、ほんの数秒考えては、次々とユニークな考えを口にしました。MBA用語に置き換えれば、「参入障壁を高めている」「ポートフォリオを組んでリスクを分散している」といった内容を、彼の分かりやすい言葉で説明してくれました。MBAで学ぶ専門用語などなくても、経営についてはいくらでも語れるのです。

 

「そうそう、そのとおり!」と何回も私は、彼の考えに賛同しました。そして最後に、彼は言いました。

 

「おれの父って偉大なんだなぁ」

 

実は、彼のお父様は、全国で多店舗展開に成功している成長企業の経営者なのです。時より、この青年が口にする「会社を経営するなら品揃えを日本一にしたい」や「従業員や、その家族を幸せにする会社がいい」といった言葉の背景には、手本となる父親の姿があるのでしょう。幼いころから近くで、父の仕事を見つめ、父と語りあって育った彼は、いつのまにか、MBA取得者顔負けのビジネス感覚を身につけていたのです。

 

私は、このような若者に成功してもらいたい、と心から思います。それは、ビジネスについての感覚が優れているからだけではありません。人前で、どうどうと、「父親が偉大だ」と言える素直な心を持っているからです。このような青年は、きっといつか、偉大な父親と対等に語り合い、日本の産業を変えていくことでしょう。

 

あなたは、コンビニで缶ジュースを一本買った瞬間に、どれだけの問題意識を持ちますか?あなたは、身近な人を「偉大だ」と堂々と言えますか?

 

どんなに不況と言われようとも、こんな青年がいる限り、日本の未来は明るいです。

 

野村るり子

 

第二百四十四言「研修期間は、ゼロでなくマイナス。辞める!のは、ご恩返ししてから。」(2009年6月1日号 No.244)」

これは、錯覚でないはず。確実にこの時期(4月、5月、6月)、胸や腕に「研修中」マークを付けて働いている人が増えています。先日は、郵便局で若い女性が。本日は、タクシー運転手さんが。また、バスの運転手さんまで・・・。

 

本日、私は、はじめて、ここ数十年利用しているお気に入りのタクシー会社にクレーム電話を入れました。タクシー運転手さんと仲良くなるのが趣味の私にとって、乗車中に憤りを感じることなんてめったにありません。皆無といって言いぐらいです。その私が、本当に、ムカっときたわけです(幼稚な表現でごめんなさい)。

 

いつも電話で配車を頼むタクシーですが、迎えに来た運転手さんの腕には「研修中」の腕章が。横浜に住む私は、その車で、早稲田大学・西早稲田キャンパス(新宿区)、に向かうところでしたが、一抹の心配が頭をよぎりました。

 

「あの、私、最寄の駅とかに行くのではなく、早稲田大学まで行くのですが、大丈夫ですか?」

 

質問の意図は、単純。もし、道が分からない運転手さんであれば、他の車を配車してもらおうと考えました。しかし、運転手さんは「あ、あの。地図見させてもらっていいですか?」と言って、必死でページをめくり出しました。しかし、そのうち、焦りだしたのか、どのページを見ていいのかも分からぬ様子になりました。私は、再度、「もし、ご存知なければいいですよ」と、車を降りる用意をしました。

 

すると、運転手さん。「分かりました。では、東京まで走らせ、早稲田大学の分かる車と代わります」と言って、東京に向かって車を出しました。そして、多摩川を越えたぐらいで、他のタクシー会社の車を止め「この人をお願いします」と言い残し、帰って行きました。

 

突然バトンタッチされた運転手さんも、なぜか、新宿区近辺が苦手らしく、ナビをつけても、ぐるぐると迷い、目的地についたのは、出発してから2時間近く経ってから。料金は通常の倍になっていました。私が残念に思ったのは、料金のことより、仕事に遅刻したことです。なぜなら、相手の方を何十分も待たせてしまったからです。

 

私が、タクシー会社に入れたクレームは、道が分からなかったことに対してではありません。「分からないことを、分からない」とおっしゃらなかったことに対してです。また、責任を他のタクシー会社の運転手さんに押し付け、走り去ったこと。このようなサービスで客が失うのは、お金ではなく「貴重な時間」。それによって失うのは、仕事のディールや顧客からの信用。自分よりもっと時間価値のある方だったら、30分のロスは計り知れない。・・・

 

しかし、当然ながら、このクレームを受けているのは、運転手さんではなく、クレーム処理担当者です。総合的に言えば、会社全体です。

 

と、こんな日は、同じようなことが重なるものです。タクシーにちょっと懲りた私は、今度はバスに乗ることにしました。すると、こちらの運転手さんの腕にも「研修中」の腕章が。隣には、指導担当者が立っていいました。

 

これもめったにない体験ですが、なんと、この新人運転手さん、神宮球場附近の上り坂で、エンストを起こしました。そして、またエンスト。そして、またエンスト。合計4回エンストを繰り返しました。その度に、数十センチ後退。

 

乗客は、「運転代わってあげればいいのに」、「こんな経験はじめてだ」、「このバスの後ろの車大変だよな」・・・とブツブツ。それでも、指導担当者は、じっとこらえ、この新人くんに最後まで運転させました。5回目にエンジンかかった時は、車内で拍手が沸きあがるほど。それを体験し、なんと、この新人君は、ニコニコ顔(いったい、事態を把握しているのだろうか?)。やっと終点に着くと、待っていた客の、「遅いよ。どれだけ遅れてんだ!」の怒鳴り声。これに最初に頭を下げたのは、新人君ではなく、指導担当者。

 

ここで、読者の皆様に質問です。ここで辛いのは誰でしょう?

 

辛いのは新人さんだけではないのです。指導員も辛いのです。そして、クレーム処理係も。また、これらの人たちに人件費を払っている会社も。

 

そうなのです、新人さんを育てている期間、会社は、生産性ゼロではなく、マイナスの損失が発生しているものなのです。このメカニズムを理解して頂ければ、数ヶ月や、数年で「辞めます!」なんて辞表出せなくなりますよね。

 

世の新人さんたちに声を大にして伝えたい。

 

「あなたが育てられている間、何人の人があなたに代わって、頭を下げているかを考えて下さい。そして、多額の、教育費がかかっていることを。『辞める!』と叫ぶ前に、まずは、会社に恩返しして下さい。せめて、4年、5年、できれば6年以上働いて下さい。そうすれが、きっと気づくはずです。新人トレーニングがどれほど大変か?なぜなら、あなたも、誰かを指導する立場になっているからです。

 

野村るり子