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第二百四十六言「『何を持っていないか?』ではなく、『何を持っているか?』の観点から、自分を見つめ直す」(2009年6月15日号)

読もう読もうと思いつつ、数ヶ月間ずっと自分のバックに入っていた、五木寛之氏の『林住期』。この度、一挙に読み終えました。ビジネス書に慣れきっていた私は、五木寛之氏の滑らかで、流れるように人の心に届くことばに、最近ではない感動を得ました。

 

なぜ、数ヶ月読むことのなかった『林住期』を一挙に読めたかですか?

 

それは、私が待ち合わせ時間を、1時間半間違えて、会合場所に到着したからです(笑)。

 

集合場所に誰もいないことに気付き、一瞬、「この時間、会社にいられれば、もっと生産性のある何かができたのに」と、ちょっとイラっと来ました。しかし、そこで、気持ちを切り替え、今だから出来ることはないか?と考え私のバックの中を覗いたところ、数ヶ月前から、赤い革表紙を着せられ、読まれることを待っていた『林住期』と目が合いました。

 

誰もいない会議室(待ち合わせ場所)は、会社の電話から開放された、心穏やかに読書ができる、素敵な空間に変わりました。時間を間違えて集合場所に到着するのも、そう悪いことではなかったようです。

 

本日私がお伝えしたいことは、この与えられた時間を価値あるものと感じるのも、無駄なものと感じるのも、あなた次第ということ。そして、この感覚と同様、自分が持って生まれた個性を、プラスに受け止めるもマイナスに受け止めるも、あなた次第ということです。

 

もう10年も前のことです。7歳の時からオリンピック出場を目指して練習に励んできた体操競技選手(当時大学生)の女の子から電話がありました。

 

「今回もオリンピックに出場できませんでした。私はこれから、どうやって生きていけばいいのでしょうか?」

 

彼女は、何回も世界選手権に出場してきた優秀な選手です。しかし、オリンピックに関しては、年齢制限(若すぎて出場できない)や怪我、体調不良といった様々な障害故、出場を逸してきました。

 

このような彼女がWinnerであるか?Loserであるか?・・・こんなことは、周囲が決めることではありません。なぜなら、人それぞれ事象の受け止め方が異なるからです。私の考えを一例とするなら、間違いなく彼女はWinnerであり、成功者です。彼女は、常に高い目標を自らで設定し、その目標に向けて常に成長してきました。結果として、オリンピックに出場はしていませんが、その過程でいくつもの世界選手権に日本代表として出場しています。確実に前に前にと進んで来ました。自分の掲げた目標を100%達成していなかったとしても、その過程で、多くの成果を手にした、彼女を私は、躊躇することなく、「成功者」と呼びます。

 

さらに、自分の掲げた目標を100%達成できなかった人には、100%達成できた人にない強みがあります。それは、「負ける」感覚を持てたこと。この感覚を自分の中だけに封じ込めたのでは惨めな気持ちになります。しかし、その気持ちを知った上で周囲を眺めれば、人に優しくなれます。

 

1等賞が見る景色、2等賞が見る景色、10等賞が見る景色、100等賞が見る景色。・・・これらは全て異なります。同じ距離を走っても、前を走る人の数が異なります。

 

1等賞は、勝者としての喜びがあります。しかし、それと同じぐらいの孤独とも戦わねばなりません。

 

2等賞は、1位になれなれなかった悔しさもあれば、メダルを手にした喜びもあるでしょう。そして、1位の人の背中から学んだことも沢山あるでしょう。

 

10等賞は、メダルは貰えません。しかし、目の前を走る9名の背中から多くを学び、彼らの辛さが理解できたでしょう。

 

100等賞は、さらに多くの前を走る99名の背中から多くを学べたでしょう。前を走る99名の辛さが理解できたはずです。その分、これから出会う多くの人に対して寛容になれるはずです。

 

先に紹介した、オリンピック出場を逸した元体操選手は、オリンピックでの解説者を務めています。テレビ局や制作会社は、なぜオリンピック出場経験のない彼女を選んだのでしょう?それは、彼女が「勝つ喜び」と「勝てない悔しさ」、「選抜される喜び」と「選抜されない悔しさ」の全てを知っていたからです。この経験こそが、どの選手に対しても、愛情を持って解説できる寛容さの源にあるのです。

 

あなたが優れているか、優れていないか?これは、周囲の評価がどうこう言う前に、あなたの心の目が、あなたをどう評価するかではないでしょうか?

 

と、こんなことを考えているうちに「本当の」待ち合わせの時間になりました。一人、また一人と人が集まり、会議室が埋まりました。そして、偶然にも、この日のメインスピーカーの青年が朗読した『ユニークなひび割れ』(作者不詳 菅原裕子訳)の詩は、自分あるべき姿を受け入れ、誇りに思おう、というメッセージが含まれていました。

 

是非、皆さまも、「何を持っていないか?」ではなく、「何を持っているか?」の観点から、自分を見つめなおして下さい。

 

野村るり子

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