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第二百四十九言「裸の王様に誰が真実を伝えるか?」(2009年7月6日号)

私は、厳しい注意をする時は、その相手が生徒さんであってもアルバイトさんであっても、一大決心をして受話器を手にします。そして、必ず、社内で宣言します。

 

「本日、受講生さんを一人失うかもしれません・・・」、や

「本日、アルバイトさんが一人辞めるかもしれません・・・」と。

 

そして、こう締めくくります。

「それでも、私が注意の電話をすることに賛成して下さいますか?」

 

これに対し、弊社のスタッフは全員、「大丈夫です」と答えてくれます。その背景には、注意をする上での大切な基準があります。それは、必ず相手の成長につながる注意であること。変えられることは変えるよう注意をする。変えられないことは受け入れるように注意をする。

 

こんな私ではありますが、若い頃には、自分が傷つくのが嫌で、注意をすることを躊躇ったことも多々あります。注意をしたことで相手が烈火のごとく怒り出したり、泣き出したりした時は、「まぁ、いいか。勝手にして下さい。困るのはあなたですから」、といった投げやりな気持ちになり、相手が直すべきことを見て見ぬふりをしました。

 

しかし、このように、自分が傷つくことを怖がり、注意することを避けた結果、大いに後悔したこともあります。特に衝撃的だったのは、知人の訃報を受けたことです。私は過去に女性の知人一人と、男性の知人一人を、偶然にも同じ32歳という若さで失っています。

 

私は、彼らの生活習慣について注意をしたいと感じたことは何回もありました。しかし、彼らが注意をされると大変興奮する性格であることを知っていたので、彼らに本音で語ることを避けてきました。おそらく、私以外の人たちも、同様に、本音で注意をすることを避けていたことでしょう。結果として、一人は過度の飲酒が原因で、もう一人は過度の睡眠薬使用が原因で、32歳という若さで人生を終えました。

 

今回、マイケル・ジャクソンの突然死の報道を目にするうちに、32歳で亡くなった彼らのことを思い出しました。もし誰かが、勇気を出して、注意し続けていたら、彼らはもっと長く生き続けたのではないか?と感じました。

 

もう一つ感じたことは、周囲の誰も本音で注意をしなくなっても、母親だけは諦めてはならない、と。マイケル・ジャクソンの遺言状には、子どもたちの親権を譲る相手として『母』の名前が記されていました。あれだけ多くの人が周囲を囲む彼にとって、実際心から信頼していたのは、母親だったのかもしれません。だからこそ、誰も注意をしなくなった「裸の王子様」に最後まで注意ができたのは母だったのではないかと。

 

私は、仕事柄、毎日多くの母親たちと話をします。彼女たちの多くは、子育てで心を痛めています。「成人した子どもが、自分の注意を聞いてくれない」、「注意をすると激しく反抗すること」、「注意をし続けると避け出す」など。それでも、母親たちは、傷つくことを恐れず注意し続けています。

 

私は、このような話を聞くたびに、「母親の偉大さ」を知ります。裸の王様は、真実を告げると激しく怒ります。裸の王女様は、真実を告げると激しく泣きます。そのうち、裸の王子様の周りにも、裸の王女様の周りにも、親身になって真実を告げる大人たちがいなくなります。皆、王子様と王女様がよろこぶことしか語らなくなります。そんな中、勇気を奮って真実を告げ、注意をし続けられるのが「母親」なのかもしれません。

 

私はまず、世の大人たちにお願いがあります。自分が傷つくことを恐れず、勇気を奮って若者に注意をすることを。そして、次に、子を持つ親たちにお願いがあります。周囲の大人たちが、誰もわが子に真実を告げなくなった時でも勇気を持って注意をし続けることを。

 

野村るり子

 

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