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第二百八十九言「人の心を動かす作品をつくるための5原則」(2010年4月12日号)

滅多にTVをリアルタイムで見ることのない私が、三谷幸喜作の『わが家の歴史』(フジテレビ、49日~11日)は、全神経を集中させて見ました。そのぐらい、三谷幸喜氏の作品からは学ぶものが多いと感じています。

 

まず、三谷氏が一つひとつの言葉を大切に扱っていることは、どの作品からも伝わってきます。ユーモアに富んだ演出には、ブラックジョーク的な嫌味は全くなく、心温まるものばかりです。セリフには、一文字の無駄もありません。おそらく語彙を選択する段階から、語彙の並べ替えに至るまで、手抜きがないからでしょう。

 

三谷氏の作品には、聴衆を無理に笑わせたり泣かせたりという"無理強いさ"が感じられません。本来誰もが持っている、が忘れている感情を一瞬で引き出す力があります。これは、彼自身が感情豊かに生きてくる過程で得たものでしょう。

 

三谷氏は、まだ40代という若さです。しかし、その決して長くはない人生において、「自分の好き」なことに、とことんのめり込んだ人生を送っています。

 

幼少期から、テレビに深い興味を示し、『刑事コロンボ』といった外国ドラマや『ドラえもん』、『パーマン』といったテレビアニメ、『ポンキッキーズ』『おはスタ』などの児童向け番組に至るまで、徹底して見てきています。また、ただ見るというのではなく、それぞれのセリフを暗記するほど深く観察してきました。さらに、歴史に対する興味は、テレビのそれと同様の深さがあります。

 

この「好きなこと」を仕事に返還する上で役立ったのは、日本大学藝術学部演劇学科での勉強です。最初は役者希望で入学しましたが、大学教授のポリシーに合わず、役者の道を退くことになりました。しかし、そのお陰で劇作家・脚本家・映画監督三谷幸喜が生まれたわけです。

 

台本と同じぐらい三谷作品で目を見張るのは、キャスティングです。視聴者の心を掴み、揺さぶり、笑いや涙を誘う演技ができる、一流どころの俳優が、総動員します。これは、キャスティングの段階で、俳優に頭を下げお願いするという構図から、「この作品になら出てもいい。出たい」と俳優に思わせる、ブランド力です。

 

これまでに、起用された俳優の名前を見て下さい。本来なら、彼らの一人か二人が起用されるだけでも、驚くほどの実力派です。

 

山本耕史、山本太郎、篠井英介、柴咲コウ、緒形拳、小松政夫、小林聡美、小林隆、松金よね子、松本幸四郎、松本潤、西村雅彦、西田敏行、石井正則、石橋貴明、石坂浩二、大泉洋、中村勘太郎、仲本工事、長澤まさみ、津川雅彦、鶴田真由、天海祐希、田村正和、渡辺謙、筒井道隆、藤原竜也、藤村俊二、梅野泰靖、八嶋智人、飯島直子、富司純子、堀北真希、役所広司、鈴木京香、鈴木保奈美、榮倉奈々。

 

では、ここで、三谷幸喜作品を通して得た教訓を整理しましょう。

人の心を動かす作品をつくりには・・・

1.        自分が好きなことにのめり込む。

2.        好きなことを仕事にする。

3.        一つひとつの作業工程を大切にする。手抜きをしない。

4.        過去に培った経験を「強み」として仕事で生かす。

5.        お願いされるだけのブランド力を持つ。(これは、1~4の結果です)

 

きっと、皆さまの中にも、私のように三谷幸喜作品から多くを学ばれた方は多いことと思います。

 

野村るり子

 

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