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第三百言「映画『告白』成功の要因を探る」(2010年6月28日号)

映画『告白』の舞台挨拶にて、中島哲也監督と、俳優では、松たか子さん(森口先生役)、西井幸人さん(少年A役)、橋本愛(少女役)、藤原薫(少年B役)が登壇されました。

 

映画『告白』と言えば、6月5日公開以来動員を延ばし、4週連続の首位。興行収入は既に20億円を突破した作品です。R-15作品でのこの数字は驚異的です。

 

そこで、この作品の成功の背景について考えてみました。

 

まず、言うまでもなく、湊かなえ著の原作の完成度が高いということ。小説『告白』は2009年の本屋大賞を受賞し、累計発行部数235万部を記録しています。

 

次に、妥協を許さない中島監督がメガホンを取ったこと。中島監督の力量は「下妻物語」や「嫌われ松子の一生」の成功が証明しています。

 

松たか子さん、岡田将生さん、木村佳乃さんといった演技力に定評のある俳優がキャスティングされていたこと。さらに、山口馬木也さんや黒田育世さんといった脇を固める俳優が役柄に絶妙にマッチしていたこと。

 

オーディションに勝ち抜いた、37名の生徒役の殆どが真っ白な状態で、中島監督の指導を受けているということ。過去の作品で、強烈な役を演じていないだけに、『告白』での役柄がなんの先入観なく見るものに影響を与えました。

 

さらに、サウンド効果と映像に全くの無駄や妥協がない。楽曲の選び方一つに始まり、雲の動き方まで、全てにメッセージが含まれていました。

 

本日の舞台挨拶で、最も心に残ったのは、中島監督の、

「今回の映画は多様に評価された。『好き』『嫌い』子に分かれる映画だからよい」という言葉でした。

 

これは多くの物作りを職業とする人たちに、勇気を与える言葉です。

 

万人に好かれようとすれば平均点レベルのつまらない作品になってしまう。個性豊かな作品作りを心掛ければ、熱狂的なファンができるのと同時に批判的に作品を評価する人も増える。

 

もともと、小説『告白』を発表された時点で、評価は一つ星から、五つ星に分かれていました。それだけに、この作品に惹かれたファンは周囲の意見を気にすることなく、「私はこの作品が好きだ」と言い切り、この作品を口コミで広げていきました。この小説『告白』のファンが最初に映画館に足を運んだことは間違えないでしょう。

 

しかし、小説『告白』の支持者の力だけでは、これだけの成功は手にできません。実は、湊かなえさん自信が、「この映画は、原作より深く描かれている」と評価しているのです。言い換えれば、原作者の期待すら超える映画作品であったということです。

 

小説『告白』と映画『告白』の共通点は、最後にテーマを残して幕を下ろすことです。小説は完全なオープンエンディングで終わっており、読む者の想像力に任せて最終章を終えます。

 

それが映画化された後も、見る側にある意味「消化不良」を起こさせる工夫がなされています。重い物を心に残された人たちは、映画館を去ったのちも、この作品のテーマについて考えようとします。すなわち、映画『告白』は心の中に再生しなおさなければ、納得感の得られない作品であるということです。

 

一人では結論を導くことのできなかった者は、ブログやツイッターを介して、意見の交換を繰り返します。その結果が、映画『告白』が社会現象を巻き起こした理由と言えるでしょう。

 

多様の評価を得られる作品作りをよしとし、妥協を許さない。多くを述べてしまいましたが、成功の要因は、中島監督のこの一言につきるのかもしれません。

 

野村るり子

第二百九十九言「テーマ性の強い作品は時代を越える。倉本聰氏の力」(2010年6月21日号)

子どものころ見た映画やドラマが、あまりにも印象深く、何十年経っても記憶から離れない。

 

このような経験はありませんか?

 

私にも、強く心に残っている作品が二つあります。これらの作品は、平成に生きる"母たち"、"父たち"にとっても十分教材となりうる作品です。

 

一つ目の作品は、『ガラス細工の家』(1973年、日本テレビ系)です。

 

何もかも満たされているように見えている家族が舞台となっています。あることをきっかけに、小学生の息子二人が、両親への復讐を企てます。純粋な子どもたちが、復讐をするに至った動機。これこそが、このドラマでの見所です。

この作品は、DVDでも販売されていますので、是非、機会があればご覧下さい。

 

もうひとつは『君は海を見たか』(1970年、日本テレビ系・リメイク1982年、フジテレビ系)です。

 

一流企業のエリートサラリーマンが、息子の余命を宣告され、それまでの生き方を振り返るものです。残された時間を息子とのふれあいにあてます。この作品での見所は、父親自身が、造船技術研究所に勤めながら、実の息子に"海"を見せていなかったことです。

この作品もDVDで販売されていますので、ご興味のある方はご覧下さい。

 

さて、私がお伝えしたい重要なポイントはここからです。

 

実は、これら二つの作品には共通点があります。それは、両方とも、倉本 聰が脚本を手がけていることです。しかも、両方とも彼が弱冠30代半ばの時の作品です。

 

『北の国から』で倉本聰氏の名前を知った方も多いでしょう。最近では、俳優 緒形拳の最後の作品となった『風のガーデン』(2008年、フジテレビ系)が記憶に新しい人もいるでしょう。

 

しかし、倉本聰氏の脚本家としての活動は、20代の頃からはじまっていました。彼の作品づくりには、妥協や言い訳といったものがまったく感じられません。さらに、強烈なテーマは、人々の心に残り、何年の月日を経ても陳腐化することがありません。

 

これが、真の芸術家の作品づくりなのでしょう。

 

野村るり子

第二百九十八言「子どもの才能育成。まず第一歩は親が才能を認める」(2010年6月14日号)

この週末は、本当に多くの才能に触れる機会がありました。

 

金曜日にはサックス奏者の中村健佐さんと父親である健さんのジョイントコンサートを、そして、日曜日は、体操のNHK杯で、世界で競うトップアスリートの演技を見てきました。

 

さて、才能の発揮している若者たちの共通点は何でしょう?それは、親が彼らの才能を認めていることです。

 

まず、中村健佐さん。彼お父様は、日本音楽コンクールで1位やジローオペラ賞を受賞された、著名なオペラ歌手です。そして、お母様も同様に優れた歌手でした。

 

このような音楽家の家族に生まれた健佐さんは、幼少の頃から音楽に触れて育ちました。しかし、彼が実際にサックスを始めたのは27歳になってからです。しかも、全くの独学で学びました。

そして、30代半ばにして、彼は安定したサラリーマンライフにピリオドを押し、プロのストリートミュージシャンとして生きていく道を選びました。

ここで後押しとなったのは父、

 

健氏の言葉でした。

「これならやっていけるかもしれない」

 

それまでは、音楽の世界の厳しさを知る両親は、音楽一筋に生きることを猛反対してきました。

父親の心を動かしたのは、一枚のCDでした。健佐さんがストリートで手売りしたCDが回りまわって、父親の元に届いたのです。

健さんは息子の奏でるサックスの音色を聞いて、「これならやっていける」と思ったそうです。

この言葉を聞いた健佐さんも、「世界的な音楽家である父が認めたのであれば、やっていける!」と確信し、プロのストリートミュージシャンとして生きることを決意しました。先にもお伝えしたとおり、30代半ばになってからのことでした。

 

「世界的な音楽家」の声がけだったから、健佐さんは決意できたのでしょうか?

私は、そうではないと思います。「父親」の声がけだったからこそ、心に響いたのです。

 

体操競技のNHK杯を観戦していても、いたるところで、親たち歓声が響いてきました。

「○○ちゃん頑張って~」と声をあげる母親。

無心でビデオを撮る父親。

手が真っ赤になるまで拍手する祖父母。

 

このような家族の力があるから、子どもの才能は開花するのです。

 

私はこれまでに、多くの才能ある子どもたちを見てきました。しかし残念なことに、彼ら全てが才能を開花させたわけではありません。

 

それは、持っている才能の量に差があったからではありません。

親の声がけに差があったからです。

「自分の子に限って」、「この子に出来るはずがない」、「どうせ失敗するなら、はじめない方がいい」、「~の道は厳しいから、挑戦しない方が傷つかない」・・・。

 

こんな声がけをし続けられた子供は、どうやって自分の力を信じることができるでしょう。どんなに優れた球根を持っていても、これでは花を開くことができません。

 

一方、

「上手い!」、「凄い!」、「綺麗!」、「速い!」と、認められて育った子どもたちは、どんどん成長しています。

 

小難しい評価は必要ありません。親の率直な意見でいいのです。専門的な技術に触れる必要もありません。単純にあなたが感じた"プラスの感想"を伝えればいいのです。

 

ここまでお話をしても、子どもの才能を認めようとせず、子どもを褒めようとしない方がいます。そのような場合は、周囲にいる"あなた"が親に代わって褒めてあげて下さい。

 

HOPESのミッションは、親と一緒に、あるいは親に代わって、子どもたちを褒めて育てることです。

 

叱られて育った子どもは笑いません。

褒められて育った子どもは笑います。

同じ成功を手にするなら、笑ってゴールを切る、そんな子どもにしたいと思いませんか?

 

野村るり子

 

第二百九十七言「自分との約束を守れなければ、人との約束も守れない」(2010年6月7日号)

このたび、久保郁(くぼかおる)先生のセミナーに参加してきました。

 

久保先生は、大学卒業後は長年JALに勤務され、その後、いくつかの企業を経験されています。その中でも、誰でも一度は耳にしたことがある大手の英語教材会社で、セールスのトップ賞を受賞されたこともあります。そして、2007年には、ご自身で会社を設立しました。

 

今回タイトルとさせて頂いた「自分との約束を守れなければ、人との約束もまもれない」は、彼女のセミナーで私の心に残ったフレーズでした。この自分との約束を"毎日"守ることが、日々の目標達成につながり、自分で掲げた、短期目標の達成につながり、最終的に長期目標の達成へと繋がるというお話でした。

 

そして、ここで言う"自分との約束"とは、「毎日歯磨きをする」や「毎日掃除をする」といった日常的な約束事に始まり、「今日こそ、映画を見に行く!」や「今日こそ、買いためたビジネス書を読む!」、「今日こそ、エステにいってキレイになる!」といった、少し力のこもるものも含まれます。こんな、とっても小さかったり、ちょっと勢いが必要だったりの約束事を、日々重ねて行く先に短期目標の達成や長期目標の達成があるということです。

 

また、仕事上での約束ごとの場合は、自分一人ではなく、相手がいるでしょう。

上司の指示に従い、頼まれた時間までに仕事を終える、

打ち合わせの時間までに資料を間に合わせる、

クライアントさんの納期を守る、など。

全て、人との約束ごとです。

 

久保先生のお話を伺って、自分の周囲にいる成功者の方を何人か思い出してみました。

 

すると、確かに、彼らは、皆、どんな小さな約束でも守る姿勢を持っていました。仮に、約束の時間に、数分でも遅れるようなことがあれば、事前に電話連絡をしてきたり、自分の部下を代わりに送ったりと、どうにかして約束を守ろうとしていらっしゃいます。

 

次に、約束とは、約束をしなければ守る必要もないわけですが、彼らは、常に自分との約束内容、他者との約束内容を更新しています。ちょっと分かりにくい表現かもしれませんね。では、言い換えてみましょう。この「約束の更新」とは、「新しい目標の設定」を意味します。

 

自分は、「○月○日までに、△をする」という約束。これはまさに目標です。この小さな目標設定をしては、確実にその目標を達成する。この繰り返しが、長期的に人を、そしてその人を取り巻く組織を成長させているのです。

 

もう一つ、久保先生のお話で印象的だったのは、「まず、1日一つの約束を守るから始めましょう!」でした。最初から、たくさんの目標達成では、気が重くなる方もいるでしょう。まずは、明日の為に、一つ、自分との約束事をしてみて下さい。

 

野村るり子

 

第二百九十六言「社会企業家の勧め」(2010年5月31日号)

3年間音信が途絶えていた教え子から電話がありました。

彼女は若干20代半ば。年商数十億の事業展開をする夫と二人の子供に恵まれ、ご自身もデザイナーズブランドを持つスーパーウーマンです。

このように、日々安定した生活を送る中で、「自分が、今やりたいことは?」と考えたら、答えが"社会貢献"だったのです。

マズローは、人間の基本的欲求を下の階層から、

1.生理的欲求、2.安全の欲求、3.所属と愛の欲求、4.承認の欲求、5.自己実現の欲求、と上り詰めた先に見えた答えであったようです。

しかし、彼女がいくら純粋に社会貢献活動を非営利で行いたいと言っても、周囲は合理的理由があるに違いないと、彼女の動機を疑いました。節税対策ではないか?売名行為ではないのか?と。

そこで、彼女は、「1円の利益も得ずに社会貢献をしたい」と相談してきたのです。

私は彼女を子どもの頃から知っていますが、中学・高校時代から募金活動や献血運動に力を入れる少女でした。ですから、彼女を知る人は、不純な理由など一かけらもないことを知っています。ですから、「非営利」にこだわる必要もないと思うのです。

 

むしろ彼女には、「社会起業家」になってもらいたいと思います。彼女は子育てを通して得た「食育」の知識や、ワーキングマザーとして得た「ワークライフバランス」の知識を世に広める力を持っていますし、彼女の書くブログには1日数千人のリーダーを動かす力があります。彼女の手腕を生かし、十分な利益を得た上で社会貢献の輪を広げていってもらいたいと思います。

さらに、著名な夫を持つ妻や、著名な子どもを持つ母が、あえて顔を隠す必要はないでしょう。仮に、スタートラインにおいて、夫や子供の名前が優位に働いたとしても、社会貢献を継続できるのは、本人に真摯な姿勢があるからです。

 

私は、こんな彼女を心から応援します。プライバシーをお守りするため、個人のお名前は伏せさせて頂きました。ご了承下さい。

野村るり子