アスリートに向けたルール・モラル・マナー遵守の教育の一事例

様々なアスリートを指導する立場におられる、指導者や親御さんへ

ホープスの坂井です。

昨今、時代の要請なのでしょう。
アスリートに向けたルール・モラル・マナー遵守の教育を依頼されることが増えています。
いわゆる、「アスリート向けのコンプライアンス研修」です。

私自身、様々な方々が作成されたプログラムの見学や受講をさせていただく中で、「なるほど、これはアスリートに知ってもらうべきことだ」と感じたことはしっかりと盛り込み、一方で「なぜもっとこういう観点を入れないのだろう?」「それは講師側の思い込みであり、実態に合っていない!」と感じたところは、改善や新規追加をしながらプログラムを作り、プロスポーツチームや競技団体に対して提供させていただいています。

概ね90分以内の研修がほとんどなのですが、その際に私が特に意識していることと、一部スライドをご紹介させていただきます。


【1】選手へのリスペクト・感謝を伝えることからスタートする

まず、私は必ず研修の冒頭で、受講生となる方々に対する「リスペクト・感謝」の気持ちをしっかりと伝えることから始めています。
もちろん、私個人からのメッセージとしてではなく、受講生となる方々のステイクホルダー(身近な関係者)に成り代わって、「リスペクト・感謝」の気持ちをしっかりと伝えます。

受講生がプロやアマチュアトップクラスの選手であれば、そのスポンサー企業で働く方々やファンの方々の立場に立ちますし、学生であれば学校やそこに通う一般生徒たちの立場に立ちます。

そして、単純に「感謝しています」という言葉だけでは伝わりにくいメッセージですので、画像や動画をふんだんに使って、「リスペクト・感謝」が伝わり、

「選手はチームを超えた大きな存在の一部」であること

を理解してくれるように努力します。

私の場合、プログラム(構成や資料、スライド)を作る際、ここに費やす努力が全体の50%くらいになっていると思います。

ここがしっかり伝わらないと、

1)コンプライアンス研修を「自分たちへの説教の場」または「大人たちの保身のため」と受け止められてしまい、しっかりと聞いて、記憶にとどめて欲しいことが、選手に届かない。

2)「なぜ、ルール・モラル・マナーを守らなければならないのか?」の理由を、「自分が損するから」とだけ捉えられてしまい、不祥事につながるリスクのある行動を自制する動機が一本足になってしまう(本来は、不祥事は「1.自分のためにならない」「2.周囲の人たちにまで迷惑を及ぼす」という二本足で自制の鍵をかけたい)。

ということが起こってしまいます。


【2】特に、「自分(選手)のためにならない」ということを、具体的にイメージできる切り口で伝える

「選手のためにならない」ということを伝えようとするとき、多くの大人は「一般論」や「他者との比較」を用いがちです。

「タバコは体に悪いんだぞ!」
「お前がそんなことやっている間、ライバルは努力してるぞ!」
「まともな人間はそんなことしない!」
「ルールなんだから守れ!」
などなど…

選手はきっと、このように考えながらあなたの話を聞いています。

「タバコは体に悪いんだぞ!」
 →タバコ吸っても長生きしている人いるし、
  っていうか一流選手の◯◯さんはタバコ吸ってるよね?!

「お前がそんなことやっている間、ライバルは努力してるぞ!」
 →そうかもしれないし、違うかもしれないじゃん。
  コーチは、ライバルが練習してんの見たのかよ?!

「まともな人間はそんなことしない!」
 →はいはい、どうせ私はまともじゃないですよ。
  っていうか、大人が考えるまともな人間って本当にまとも?!

「ルールなんだから守れ!」
 →中学の先生かっての?!
  そもそもそのルールの根拠ってなに?!

私は、選手に対して「自分自身との比較」という切り口で考えてもらっています。
(最初のスライド画像をご参照ください)

不祥事によって、
選手は「時間」を奪われます。

・聞き取り調査をされる時間
・謹慎などで練習が制限される時間
・練習に復帰する際に生じる復帰プロセスの時間
・罪悪感から生じる遠慮や我慢がうむ無駄な時間
・モチベーションを取り戻すまでの時間

不祥事によって、
選手は「機会」を奪われます。

・通常の練習を行う機会
・レギュラーや代表に選ばれる機会
・良いタイミング、良い環境という機会

すべて、

「不祥事を起こさなかった」自分

「不祥事を起こした」自分

の比較の中で、「どちらが、自分の目指す場所への近道か?」を考えてもらうようにプログラムで誘導していきます。

本当はたどり着けたかもしれない場所に、
ただでさえ、たどり着くのが困難な場所に、
そこに行きたいのは、誰よりも自分自身なのに、
他ならぬ自分が、その邪魔をするということほど、
愚かなことはないのだと。

みなさまが選手に対してコンプライアンス教育を行う際の参考に、少しでもしていただければ嬉しく思います。

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